3年間の田舎での勤務をなんとか耐え抜いた。
いよいよ春、異動の季節。毎年欠かさず「地元から通える範囲」を希望していたけれど——結果は無情だった。
発表された異動先は、地元とこれまでの勤務地のちょうど中間地点にある都市。
これまでより多少は地元寄りになったとはいえ、車で高速を使っても片道4時間。
「なんで私ばっかり……」
無宗派の私でさえ、このときばかりは神さまを恨んだ。
もちろん人事異動に異議を唱える理由はなく、結局今回も“お上の命令”に従うしかなかった。
希望の光、そしてまさかのすれ違い
唯一の救いは、その赴任予定の都市に大学時代のアルバイトで知り合った友人が暮らしていたこと。
蕎麦屋のバイト仲間だったその友人は、今となっては人生に欠かせない大切な存在だ。
異動が決まってからは、慣れない土地での暮らしの情報を郵便で送ってくれたり、
「同じ都市になったら遊びに行こう」と約束してくれたり。
心細い異動に、ほんの少しの希望の光が差し込んでいた。
——ところが。
3月下旬、まさかの知らせが届いた。
その親友もまた人事異動で別の都市へ行ってしまうというのだ。
春、すれ違いから始まる新生活
ようやく「同じ場所で暮らせる」と思っていたのに、すれ違い。
せっかくの希望が目の前で消えていく。
「これから迎える春、私の運命は一体どうなるのだろう」
そんな思いを胸に、新しい都市での生活が始まろうとしていた。
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